Spring Batch におけるファイル処理のトランザクション管理

Spring Batch はバッチ処理のためのフレームワークであり、トランザクション管理をサポートしています。データベース以外のファイル処理のようなシナリオでも、トランザクション管理の概念を適用できます。以下、Spring Batch におけるファイル処理のトランザクションについて、詳しく説明します。


1. トランザクション管理の仕組み

Spring Batch のトランザクション管理は、Spring の 宣言的トランザクション管理(Declarative Transaction Management)プログラム的トランザクション管理(Programmatic Transaction Management) に基づいています。

データベース操作では PlatformTransactionManager(通常は DataSourceTransactionManager)を使用しますが、ファイル処理のようなデータベースを使用しない場合は ResourcelessTransactionManager(リソースレストランザクションマネージャー) を使用し、トランザクションの動作をシミュレートできます。


2. ACID 特性

ACID とは、トランザクションの 4 つの重要な特性 原子性(Atomicity)、一貫性(Consistency)、分離性(Isolation)、耐久性(Durability) のことです。Spring Batch におけるファイル処理のトランザクションでは、これらの特性は以下のように適用されます。

  1. 原子性(Atomicity)

    • Spring Batch では Step 単位でトランザクションを管理し、Step の途中でエラーが発生した場合にすべての処理を取り消せる。
    • 例えば、CSV ファイルを読み込んでデータベースに書き込む処理が失敗した場合、Spring Batch はその Stepロールバックし、不完全なデータがデータベースに残るのを防ぐ。
  2. 一貫性(Consistency)

    • Step の開始前と終了後で、データの整合性が保たれることを保証する。
    • 例えば、ファイル書き込みの途中でエラーが発生した場合、不完全なデータがファイルに残らないようにロールバックできる。
  3. 分離性(Isolation)

    • 通常、ファイル処理は直列的に行われるため、データベースのような高度な分離レベルは必要ない。
    • ただし、複数の Step が並行して異なるファイルを処理する場合、データの競合を防ぐ必要がある。
  4. 耐久性(Durability)

    • Step が正常に完了した場合、その結果は永続化され、システムクラッシュが発生しても失われないことを保証する。
    • 例えば、ファイル処理後にデータをデータベースに保存する場合、一度コミットされたデータはシステム障害が発生しても保持される。

3. ロールバックの方法

データベースのトランザクションでは rollback() を呼び出すことで変更を取り消せますが、ファイル処理のトランザクションでは異なる方法でロールバックが実装されます。

  • ファイルの読み込み(ItemReader)

    • ItemReader は通常、元のファイルを変更しないため、ロールバックの必要はない。
    • ただし、途中で処理が失敗した場合、Spring Batch は JobRepository を利用して、次回の実行時に前回の失敗した位置から再開できる。
  • ファイルの書き込み(ItemWriter)

    • ItemWriter がファイルにデータを書き込む際にエラーが発生すると、すでに書き込まれたデータをロールバックする必要がある。
    • 例えば、一時ファイルに書き込んだ後、処理が成功した場合にのみ本番ファイルと置き換えることで、ロールバックを実現できる。
  • データベース操作

    • ItemWriter がデータベースに書き込む場合、Spring Batch は通常のデータベーストランザクションを利用して rollback() による一括取り消しを行う。

4. トランザクション分離レベル

データベースでは、一般的に READ UNCOMMITTED、READ COMMITTED、REPEATABLE READ、SERIALIZABLE の 4 つの分離レベルが使用されます。Spring Batch のファイル処理においては、これらの概念は厳密には適用されませんが、次のようにシミュレートできます。

分離レベル データベースの動作 ファイル処理における対応
READ UNCOMMITTED 未コミットのデータを読み取る(ダーティリード) 他のプロセスが書き込み中のファイルを読み取る可能性がある
READ COMMITTED コミット済みデータのみを読み取る ファイルが完全に書き込まれた後でのみ読み取れる
REPEATABLE READ 1 つのトランザクション内で同じデータを読むと同じ値が取得できる トランザクション内でファイルの内容が変更されない
SERIALIZABLE すべてのトランザクションを直列実行する ファイルの書き込みを排他制御し、並行処理を防ぐ

Spring Batch はデフォルトで READ COMMITTED の動作に近い状態となっており、未完了の Step のデータが次の Step に影響を与えないようになっている。


5. 並行処理の制御

Spring Batch では、大量のデータを効率的に処理するために並行処理が用いられますが、次の 3 つの側面で制御が必要です。

  1. 並行読み込み(Concurrent Reading)

    • 複数の Step が異なるファイルを並行して処理することで、スループットを向上させる。
    • 例えば、MultiResourceItemReader を使用すると、複数のファイルを並列に読み取ることができる。
  2. 並行書き込み(Concurrent Writing)

    • ファイルはトランザクションロールバックが難しいため、Spring Batch は チャンク処理(Chunk-based Processing) を採用し、小さな単位で確定させながら処理を進める。
    • FlatFileItemWritertransactional=true 設定により、一括書き込みが可能。
  3. ジョブの並行実行制御(Job Concurrency Control)

    • JobRepository により、同じ Job の二重実行を防ぐことができる。
    • JobLauncher の設定で synchronized オプションを有効にし、ジョブを直列実行させることも可能。

まとめ

Spring Batch は、データベースを使用しないファイル処理でも ResourcelessTransactionManagerチャンク処理 を活用することで、トランザクション管理を実現できます。

初心者はまず データベースを使用した Step のトランザクション管理 を学び、それを ファイル処理や並行ジョブ に適用することで、より高度な制御が可能になります。